ルーヴルNo.9

ルーヴルNo.9 漫画、9番目の芸術
2017年7月22日(金)~9月25日(日)
森アーツセンターギャラリー

とにかくスゴいメンバーのスゴい原画が同時に観られることがスゴい、という展覧会である。

印刷された本の状態のときの見え方を想定して描いている日本の一般的な作家と違って、欧州の作家たちはふつう、原画そのものが一番美しく見えるように描く努力をしている。エンキ・ビラルなどはいまや、本ではなく、展覧会こそを発表メディアと考えている「絵描き」である。今回の彼の作品も、あの大きさで、しかも額装されている状態で鑑賞することに意味がある、というものだ。今回参加している日本人作家たちも、谷口ジローや松本大洋、五十嵐大介など、どちらかと言えば、原画を鑑賞することに独立した価値があるという、日本では珍しいタイプの作家たちである。

一方で、フランスなどに比べると驚異的なスピードで作品を制作している日本人作家ならではの工夫も、原画をじっくり観ることで発見できるだろう。今回出展している海外勢の作家たちが、荒木飛呂彦の原画をみて、彼が、美術館の外観を、手描きする代わりに写真をゼロックスコピーして切り貼りしていることに驚いていたのは印象的だった。

お金のかかった展覧会場の空間創りも含め、本で読むのとは異なるマンガの楽しみ方を教えてくれる展覧会である。

[初出=『マンガ論争15』永山薫事務所、2016年]